はじめに
ユーザーインタビューは、製品やサービスをより良いものにするための貴重な情報を得る方法です。しかし、適切な手順を踏まないと、せっかくのインタビューが期待する結果をもたらさない可能性もあります。
この記事では、有益なユーザーインタビューを実施するための具体的なステップとポイントを解説します。これを読めば、インタビューの目的を達成し、得られた情報を実践に活かすための手法を学べます。
有益なインタビューを実施する方法
1. 準備段階
目的の明確化
インタビューを始める前に、何を知りたいのかを具体的に定義することが重要です。
たとえば、「ユーザーが特定の機能をどう使っているのか」「改善すべきポイントはどこか」といった目的を設定することで、インタビューの方向性が定まり、質問内容も明確になります。
対象者の選定
調査目的に合った対象者を選ぶことも成功の鍵です。
年齢、性別、製品やサービスの使用経験などの条件を設定し、自社の顧客データベースやSNS、リクルーティングサービスを活用して適切な候補者を見つけましょう。
質問設計
質問はオープンエンド形式を中心に設計します。
「〇〇についてどう感じますか?」「使用していて不便に感じる点は?」など、自由に答えられる質問を用意することで、ユーザーの本音や具体的なニーズを引き出せます。
2. 実施段階
ラポールの構築
インタビューは参加者との信頼関係(ラポール)を築くことから始めます。インタビュー冒頭に軽い雑談を交え、リラックスした雰囲気を作ることで、自然な回答を引き出しやすくなります。
柔軟な進行
準備した質問ガイドはあくまで参考程度にとどめ、参加者の反応に応じて柔軟に進行しましょう。誘導的な言葉遣いは避け、ユーザーが自由に意見を述べられる環境を整えます。
深掘り技術
参加者の発言をさらに掘り下げる質問を用意します。たとえば、「具体的にどのような点でそう感じますか?」「他にはどんな事例がありますか?」といった問いを投げかけることで、より詳細な情報を得ることができます。
避けるべき質問の例
ユーザーインタビューで避けるべき質問には、以下のような具体例があります。
- 「〇〇ということですよね?」
この質問は、ユーザーが自分の意見を言語化するのを妨げ、インタビュアーの仮説に誘導してしまう可能性があります。ユーザーが自分自身で考えた意見を引き出すことが重要です。 - 「〇〇で困っていませんか?」
このような質問は、インタビュアーが先に課題を決めつけてしまうため、ユーザーが本当に困っていることを見逃す原因になります。ユーザーから自然な反応を引き出すことが大切です。 - 「あなたはどう思いますか?」
この質問は一見良さそうですが、ユーザーの意見に偏りが生じやすく、実際の行動や経験から得られる情報を逃してしまう可能性があります。行動に基づく質問を優先するべきです。 - 「なぜですか?」
「なぜ」という問いかけは、ユーザーに無理に考えさせることになり、正確な回答を得られない場合があります。この質問は避け、具体的な行動や状況について尋ねる方が効果的です。
これらの質問は、ユーザーからの真実の声や深い洞察を引き出す妨げとなるため、注意が必要です。代わりにオープンエンドな質問や具体的な行動について尋ねることで、より有益な情報を得ることができます。
3. 分析段階
データ整理
インタビューで得られた情報をポストイットやAEIOUフレームワークなどを活用して視覚的に整理します。これにより、発言内容をグループ化し、情報の全体像を把握しやすくなります。
パターンの識別
整理したデータからパターンやテーマを見つけ出します。たとえば、同じ問題点を挙げるユーザーが複数いる場合、その点が改善の優先事項となるでしょう。KJ法を用いると、効率的にグルーピングや関連性の把握ができます。
インサイトの抽出
ユーザーの行動や感情に基づき、得られた情報から新たな洞察を引き出します。このプロセスでは「意見」と「事実」を混同せず、ユーザーが具体的に経験した行動や状況に注目します。
4. 結果の統合と報告
最後に、得られたインサイトをもとに改善策や新しいアイデアを提案します。報告書は明確でわかりやすい形式でまとめ、要点や具体的な発見をサマリーとして記載しましょう。
ユーザーインタビュー分析でよくある失敗とは?
ユーザーインタビュー分析でよくある失敗には、以下のような具体的な要因があります。
- 調査目的が不明確: インタビューを行う前に、何を知りたいのか明確にしないと、得られるデータが無駄になる可能性があります。目的が曖昧だと、質問も曖昧になり、参加者からの有益な情報を引き出せません。
- 信頼関係の構築不足: インタビュー開始時に参加者との信頼関係を築かないと、参加者は本音を話しづらくなります。リラックスした雰囲気を作ることが重要です。
- 誘導的な質問: 質問が誘導的であると、参加者はインタビュアーの期待に応えようとしてしまい、本来の意見や感情が引き出せなくなります。オープンエンドな質問を心掛けるべきです。
- 深堀り不足: 参加者の発言を深堀りしないと、表面的な回答しか得られず、重要な洞察を見逃すことになります。具体的なフォローアップ質問が必要です。
- メモ取りやマルチタスク: インタビュー中にメモを取ることや他の作業を行うと、参加者との関係が損なわれる可能性があります。可能であればインタビューを録音し、後で詳細を確認する方が良いでしょう。
音声の文字起こしとしては、インタビューAIなどを用いると、1時間のインタビュー音声でもわずか15秒で文字起こしし、自然な会話形式に整えてくれます。
これらの失敗は、ユーザーインタビューから得られるデータの質や有用性に直接影響します。したがって、事前準備や実施中の注意が不可欠です。
まとめ
有益なユーザーインタビューを実施するためには、明確な目的設定、適切な対象者の選定、質の高い質問設計、信頼関係の構築、柔軟な進行、そして得られたデータの整理と分析が欠かせません。これらのステップを踏むことで、ユーザーの本音やニーズを正確に把握し、製品やサービスの改善に役立てることができます。
次に実施するユーザーインタビューでは、この記事で紹介した方法をぜひ活用してみてください。分析の結果を元に、ユーザーの視点を活かした改善を進めることで、より良い成果を得られるはずです。